改ページ サンプル(夢十夜 第四夜)

爺さんが表へ出た。自分も後あとから出た。爺さんの腰に小さい瓢箪ひょうたんがぶら下がっている。肩から四角な箱を腋わきの下へ釣るしている。浅黄あさぎの股引ももひきを穿はいて、浅黄の袖無そでなしを着ている。足袋たびだけが黄色い。何だか皮で作った足袋のように見えた。

爺さんが真直に柳の下まで来た。柳の下に子供が三四人いた。爺さんは笑いながら腰から浅黄の手拭てぬぐいを出した。それを肝心綯かんじんよりのように細長く綯よった。そうして地面じびたの真中に置いた。それから手拭の周囲まわりに、大きな丸い輪を描かいた。しまいに肩にかけた箱の中から真鍮しんちゅうで製こしらえた飴屋あめやの笛ふえを出した。
「今にその手拭が蛇へびになるから、見ておろう。見ておろう」と繰返くりかえして云った。

子供は一生懸命に手拭を見ていた。自分も見ていた。
「見ておろう、見ておろう、好いか」と云いながら爺さんが笛を吹いて、輪の上をぐるぐる廻り出した。自分は手拭ばかり見ていた。けれども手拭はいっこう動かなかった。

爺さんは笛をぴいぴい吹いた。そうして輪の上を何遍も廻った。草鞋わらじを爪立つまだてるように、抜足をするように、手拭に遠慮をするように、廻った。怖こわそうにも見えた。面白そうにもあった。

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